2, 経由印字と接続駅磁気符号

章目次

  1. 接続駅
  2. 経由印字
    1. 原則
    2. 支線
    3. 70条区間(電車大環状線)内
    4. 特定都区市内
  3. 接続駅・経路数の調べ方

a. 接続駅

マルス券の経由欄には路線名が印字されていますが,磁気符号としては経由「路線」が書き込まれているわけではありません.あくまで路線どうしの「接続駅」が書き込まれているだけです(twitter).そのため,経由欄の印字数だけでは120mm券になるかどうかは判断できません.

したがって120mm券になる条件を示すには接続駅を(あるいは接続駅「も」)表した方がわかりやすいと思われます.また,発着駅は接続駅のうちに入らないので,たとえば次のように表すとわかりやすいでしょう.

乗車券
[区]東京都区内→柏崎/経由:東北・高崎線・上越・信越
  • 発:[区]東京都区内
  • 1, 大宮
  • 2, 高崎
  • 3, 越後川口
  • 4, 宮内
  • 着:柏崎

なお,[ ]内は経由欄に印字される路線名または接続駅名,( )内は経由欄に印字されない路線名等を表すこととします.

もっとも,ある1つの路線は接続する他路線との間に1つだけ接続駅をもち,それ以外には接続駅をもたないことがふつうですので,簡単には12経由で120mm券になると言っても構いません.

b. 経由印字

i. 原則

すでに説明したとおり,経由欄の路線名だけを見てすべての接続駅がわかるわけではありませんが,経由欄の見方がわからなければそもそもどの駅が接続駅であるかを知ることはできません.まずは経由欄の見方を説明します.

乗車券の「経由:」に印字される経由路線名は原則として線路名称から「(本)線」を除いたものです.ただしそれと一致する駅名がその路線(またはその路線に関係する路線)に存在する場合,「線」をつけて区別します.

常磐
「常磐線」から「線」を除く
東海道
「東海道本線」から「本線」を除く
高崎線
高崎駅が存在する
函館線
函館駅が存在する(線路名称は「函館本線」)
横浜線
乗り入れ先の東海道本線に横浜駅がある
奈良線
乗り入れ先の関西本線に奈良駅がある
水戸線
乗り入れ先の常磐線に水戸駅がある
片町線
かつて片町駅が存在した
山手
山手駅は根岸線の駅であり山手線の駅ではない
鹿島
鹿島駅は常磐線の駅であり鹿島線の駅ではない
中央東・中央西
中央本線は塩尻で分かれる
後藤寺線
1982年まで田川後藤寺駅は後藤寺駅と称していた

経由路線が増えると,印字文字数を減らすために「東海」のような略称が使われます.略称の一覧は7, マルス経由線・接続駅・省略コード一覧にあります.

経由印字の文字数は,ふつうの文字(英数字含む)を2バイト,「・」を1バイトとして数え,120mm券の場合75バイトまで,85mm券の場合49バイトまで入るようです(twitter).120mm券の場合(「・」を除いて)路線名だけを数えると31文字までは収まることが多いですが,32文字になると収まり切らなくなる場合が多くなります.最多は33文字ですが,ごく限られた路線名等の組み合わせでないと収まることはありません(twitter).なお,指定席券売機(あるいは経路自動案内?)で発券した場合,32文字(75バイト)だと収まらないことがあるようです(twitter, twitter).印字あふれ分は,マルス端末では画面に表示され,またレシートに印刷されて出てきますので,手書きで書き足してもらうことになります.あるいはマルス端末に印字省略の機能がありますので,(経路が不明確にならない範囲で)一部の印字を省略してもらうことができます.指定席券売機では書き足すことも,明示的に印字省略を行うこともできませんので,機械に任せるほかありません.省略される部分がどのように決まるかはよくわかっていません.場合によっては経由が不明確になってしまっていることもあります.なお,マルス端末で印字省略を行う場合,東海道山陽新幹線のみは省略できないようです(twitter).また新幹線乗換駅や社線接続駅も省略できないようです.連絡乗車券の場合,社線の路線名は省略されにくいようです(twitter).

85mm券の場合も経由印字が省略されることがあります.ただしその場合でも接続駅の磁気符号は省略されません.

ii. 支線

支線や別線の多くは券面には印字されません.そのような場合,マルス経由線のカナコードに倣ってここでは「南武2」などと書くことにします.支線や別線のうち,券面に印字されるのは次の路線です.

函館線
函館本線2(大沼-渡島砂原-森).
信越
信越本線3(篠ノ井-長野).
成田線
成田線2(成田-我孫子).
中央2
中央本線2(岡谷-辰野-塩尻).
大阪環(・西九条)
大阪環状線2(大阪-福島-天王寺).
鹿児島線
鹿児島本線2(川内-鹿児島).
香椎線
香椎線2(香椎-西戸崎).
筑肥線
筑肥線2(唐津-姪浜).

なお,「東北」(日暮里〜尾久〜赤羽間)も印字されますが,これはマルス経由線では本線扱いです(トウホ2:田端〜王子〜赤羽間が支線扱い).桜島線は支線ではありませんが,経由印字はありません.

さて,函館本線2,成田線2,中央本線2,香椎線2はそれぞれの本線と直接接続しています.本線と支線にまたがる形の経路の場合,両方の経由が印字されます.

  1. 仁山→池田園/経由:函館線・函館線
  2. 酒々井→下総松崎/経由:成田線・成田線
  3. 下諏訪→川岸/経由:中央東・中央2
  4. 香椎神宮→和白/経由:香椎線・香椎線
仁山→池田園/経由:函館線・函館線
(i) 仁山→池田園/経由:函館線・函館線

ただし函館本線2は函館本線の,成田線は総武本線の特殊経由線ですので,経路によっては路線名表記ではなく特殊経由線表記になることがあります.

  1. 大沼公園→池田園/経由:函館線・池田園
  2. 物井→下総松崎/経由:総武・酒々井・成田線(経路入力の場合)

経由印字のない支線を介して,その本線と乗り継ぐ場合,経由印字は1つだけになります.

  1. 新浦安→新習志野/経由:京葉(西船橋経由の場合)
  2. 長崎→諫早/経由:長崎線(長与・本川内経由の場合)

aでは,新浦安→市川塩浜(京葉)間は「経由:京葉」,市川塩浜→西船橋(京葉3)間は「経由:---」,西船橋→南船橋(京葉2)間は「経由:---」,南船橋→新習志野(京葉)間は「京葉」となりますが,これらの区間を乗り継いだ場合,「経由:京葉・京葉」にはならずに「経由:京葉」のみになります.bも同様です.長崎→浦上(長崎本線)間は「経由:長崎線」,浦上→(長与・本川内経由)→喜々津(長崎本線2)間は「経由:---」,喜々津→諫早(長崎本線)間は「経由:長崎線」となりますが,これらの区間を乗り継いだ場合,「経由:長崎線・長崎線」にはならずに「経由:長崎線」のみになります.なお,長崎本線2は長崎本線に対する特殊経由線ですので,浦上または喜々津で折り返す形になる場合,たとえば「現川→諫早」の場合は「経由:長崎線・西浦上・東園・長崎線」のように特殊経由線表記が現れます.

iii. 70条区間(電車大環状線)内

はじめに

旅客営業規則第70条で規定されている太線の区間,すなわち山手線と赤羽・錦糸町で囲まれる区間(以下「70条区間」「70条太線区間」と呼びます)に関しては運賃の計算や効力に関していくつかの特例があります.まず,この区間について用いられる用語を確認しておきます.

通過
70条区間の外から70条区間に入り,70条区間の外に抜ける場合.例:大井町→(品川)[70条区間内](赤羽)→川口.
発着
70条区間内の駅を発駅または着駅とする場合.例:(70条区間内の駅である)原宿[70条区間内](品川)→大井町.
相互発着
発着駅と経由駅がすべて70条区間の中にある場合.例:大崎(山手・東海道経由)東京.

α. 通過

70条区間を通過する場合,「経路の指定を行わない」(旅客営業規則第70条)とされています.そのため,次の経由印字は省略されます.

  1. 山手(品川〜代々木)
  2. 山手2(日暮里〜新宿)
  3. 赤羽線(池袋〜赤羽)
  4. 総武2(御茶ノ水〜錦糸町)
  5. 東海道(東京〜品川間のみ乗車の場合)
  6. 東北(東京〜日暮里/赤羽間のみ乗車の場合)
  7. 東北2(田端〜赤羽)

次の乗車券では,東北本線の乗車区間が秋葉原〜日暮里と東京〜日暮里間に収まっていますので,印字されません.

乗車券
平井→三河島/経由:総武・常磐
  • 発:平井[総武]
  • 1, 錦糸町(総武2)
  • 2, 秋葉原(東北)
  • 3, 日暮里[常磐]
  • 着:三河島

同様に次の乗車券では,東海道本線の乗車区間が東京〜品川間ですので,印字されません.

乗車券
平井→武蔵小杉/経由:総武・横須賀線
  • 発:平井[総武]
  • 1, 錦糸町
  • 2, 東京(東海道)
  • 3, 品川[横須賀線]
  • 着:武蔵小杉

東京〜品川間を越えて東海道本線に乗車する場合,また同様に東京〜日暮里(・赤羽)間を越えて東北本線に乗車する場合は当然「東海道」「東北」は印字されます.

β. 発着

70条区間発着の場合,途中下車しない限り70条区間内では迂回乗車できます(旅客営業規則第160条第1項).したがってふつうに乗車券を発売した場合,70条区間内は最短経路で発売されます.このとき,通過の場合には印字されなかった以下の経由が印字されるようになります.

  1. 山手(品川〜代々木)
  2. 山手2(日暮里〜新宿)
  3. 赤羽線(池袋〜赤羽)
  4. 総武2(御茶ノ水〜錦糸町)
  5. 東海道
  6. 東北(東京〜日暮里/東京〜尾久〜赤羽)
  7. 東北2(田端〜赤羽)

東北2,山手2,総武2はそれぞれ「東北」「山手」「総武」と印字されます.なお,中央東線代々木〜新宿間のみを山手あるいは山手2,あるいはその両方と連続して乗車する場合,「中央東」(代々木〜新宿間に当たるものとしての)は印字されません(下記「山手」の項参照).

総武2

たとえば70条区間発着の次の乗車券では,通過や相互発着の場合に省略される「総武2」(と「山手」)が印字されています.「東北」は通過の場合に省略されます(相互発着の場合は印字されます).

乗車券
原宿→三河島/経由:山手・中央東・総武・東北・常磐
  • 発:原宿[山手]
  • 1, 代々木[中央東]
  • 2, 御茶ノ水[総武(2)]
  • 3, 秋葉原[東北]
  • 4, 日暮里[常磐]
  • 着:三河島
原宿→三河島/経由:山手・中央東・総武・東北・常磐
:原宿→三河島

次の乗車券でも同様です.なお,日暮里〜田端間は東北本線のように思えますが,マルス経由線では山手2となっています.70条区間発着のため,「山手」も印字されています.

乗車券
川口→浅草橋/経由:東北・山手・東北・総武
  • 発:川口[東北]・赤羽(東北2)・田端[山手(2)]・日暮里[東北]
  • 1, 秋葉原[総武(2)]
  • 着:浅草橋
赤羽線

「赤羽線」も70条区間発着の場合にのみ印字されます.例:「川口→十条/経由:東北・赤羽線」.

山手

「山手」も70条区間発着の場合にのみ印字されます.なお,中央東線代々木〜新宿間のみを山手あるいは山手2,あるいはその両方と連続して乗車する場合,「中央東」(代々木〜新宿間に当たるものとしての)は印字されません.次のようなパターンがあります.

  1. 大井町→新大久保/経由:東海道・山手(「東海道・山手・中央東・山手」とはならない)
  2. 西大井→新宿/経由:横須賀線/西大井・山手(「横須賀線/西大井・山手・中央東」とはならない)
  3. 川口→原宿/経由:東北・赤羽線・山手(「東北・赤羽線・山手・中央東・山手」とはならない)
  4. 北赤羽→代々木/経由:埼京/北赤羽・赤羽線・山手(「埼京/北赤羽・赤羽線・山手・中央東」とはならない)

γ. 相互発着の場合・補正禁止を行った場合

相互発着の場合は次の経由だけ印字され,ほかの経由は省略されます.

  1. 東海道
  2. 東北(東京〜尾久〜赤羽間)
  3. 中央東
  4. 総武

補正禁止を行った場合も同様になります.たとえば赤羽〜品川間は東京経由が最短ですが,70条区間内を複数回通る場合は赤羽〜新宿〜代々木〜品川のように通ることが可能になる場合があります.この場合,新宿〜代々木間が中央東ですので,中央東だけ印字され,その他の経由(赤羽線・山手2・山手)はすべて省略されます.またたとえば東北(東京〜日暮里間)は通過の場合は省略されますが,補正禁止を指定した場合には印字されるようになります.なお,70条区間を通過する場合,(原則として)最短経路で計算することになっていますので,補正禁止を指定してよいかどうか十分に確認する必要があります.

iv. 特定都区市内

特定都区市内完結の路線名は印字されません.たとえば[京]京都市内発着の乗車券で東海道線は京都〜山科間のみを利用し,湖西線方面に(から)進む場合,「東海道」は印字されません.ただし新幹線乗換駅と「新幹線」は印字されます.たとえば[山]東京山手線内発着の乗車券で東海道新幹線東京〜品川間のみを利用し,東海道本線あるいは品鶴線(横須賀線)方面へ進む場合,「新幹線・品川」は印字されます.

c. 接続駅・経路数の調べ方

i. 85mm / 120mm券の境界を調べる

11経路であることが確実にわかっている経路(「既知の11経路」と呼ぶことにします)に,不明な経路を追加して120mm券になれば,その不明な経路は1経路以上であることがわかります.そして次に,既知の11経路から1経路少なくした上で,その不明な経路を追加して85mm券になれば,その不明な経路が1経路であることがわかります.

一般的にこの方法では,接続駅がどの駅であるかを求めることは面倒,あるいは不可能です.

ii. 路線符号を調べる

マルス券に書き込まれている接続駅の情報(駅符号)は,当然,乗車/下車しようとしている駅が,経路上にあるかどうかを自動改札機が判断するために用いられています.この仕組みをごく簡単に解説します.ある路線は原則として1つの路線符号をもちます.そしてその路線の一方の端から順番に符号(ここでは「駅符号」と呼ぶことにします)がそれぞれの駅に振られています.すなわち駅符号は「路線符号+駅順符号」から成ります.ある駅で乗車/下車しようとする場合,その駅の駅符号が,その乗車券の発着駅と接続駅によって決められる経路の中に収まっていれば乗車/下車でき,収まっていなければできません.言い換えると,乗車/下車しようとする駅の駅符号のうち,路線符号は経路内の路線符号のうちの少なくとも一つと一致していなくてはならず,かつその駅順符号も経路内に収まっていなければなりません.

すると,マルス経由線では1つの路線であっても,路線符号が異なる2つ以上の路線から成っていれば,その境界駅が接続駅になっている可能性が高くなります.

逆に路線符号が1つであってもマルス経由線では路線が2つ以上に分かれている場合があります.このような場合はマルス経由線上での境界駅は接続駅としなくてもよいような気がしますが,実際には接続駅になるようです(逆にJR西日本のPOS端末券では接続駅にならない場合があります).

以上のように考えると,2つの路線が接続するところでは,一方の路線の路線符号+駅順符号と,もう一方の路線の路線符号+駅順符号の両方が用いられるように思われます.

乗車券
北上→秋田/経由:東北・田沢湖線・奥羽
  • 発:東北本線北上(2:99)
  • 1, 東北本線盛岡(2:A5)
  • 2, 田沢湖線盛岡(31:81)[*]
  • 3, 田沢湖線大曲(31:93?)[*]
  • 4, 奥羽本線大曲(12:4A)
  • 着:奥羽本線秋田(12:54)

しかし実際には接続駅の駅符号は,より路線符号の小さい方の路線の分のみが記録されます.たとえば上の例では,盛岡駅は東北本線(路線符号2)と田沢湖線(路線符号31)の駅ですが,路線符号は東北本線の方が小さいため,田沢湖線盛岡の方は省略されます.この場合の東北本線盛岡の駅符号のことを代表駅コードと呼ぶようです.同様に大曲駅は田沢湖線(路線符号31)と奥羽本線(路線符号12)の駅ですが,路線符号は奥羽本線の方が小さいため,田沢湖線大曲の方は省略されます(奥羽本線大曲が代表駅コード).したがって,*を付した駅符号は省略されることになり,上の場合の接続駅数は2ということになります.

代表駅コードの決め方には例外があります.新青森駅は東北本線(新幹線)の駅(路線符号2)でもあり,奥羽本線の駅(路線符号12)の駅でもありますが,代表駅コードとしては「奥羽本線」新青森となっています.また新函館北斗駅は函館本線(路線符号D)の駅でもあり,北海道新幹線(路線符号E)の駅でもありますが,代表駅コードとしては「北海道新幹線」新函館北斗となっています(twitter).

iii. 磁気解析を行う

マルス券の裏側に細かい鉄粉を振りかけると,接続駅の駅符号を読み取ることができます(twitter).また「磁気ビュアシート」や「磁界観察シート」のような名称で,磁界を確認する器材が販売されています.